BuzzFeed破産に学ぶ — AIコンテンツの正解と不正解





かつて「バイラルメディアの王様」と呼ばれたBuzzFeedが、いま破産の瀬戸際に立っている。

2025年の純損失は5,730万ドル(約85億円)。決算報告書には「事業継続に重大な疑義がある」という一文が並んだ(出典: BuzzFeed, Inc. 2025年度年次報告書)。

原因としてよく語られるのが、2023年に断行した「AI全面pivot」だ。

ピューリッツァー賞を受賞した報道部門を閉鎖して、ChatGPTで記事を大量生成する体制に切り替えた。「これが未来だ」と宣言したはずの判断が、わずか2年で会社を瀬戸際まで追い込んだ。

これは「AIを使ったからダメだった」という話じゃない。「どうAIを使ったか」の話だ。



BuzzFeedが選んだ道:量の追求

BuzzFeedのAI活用は、ひとことで言えば「コンテンツの工業化」だった。

記事を人間が書くコストを下げて、本数を増やす。SEOで検索流入を稼ぐ。広告収益を最大化する。論理としては一見シンプルで正しそうに見える。

でも実際に起きたのは、誰も読まないコンテンツの山だった。

Redditではこんな声がバズっていた。「BuzzFeedがAIスロップに切り替えて3年、廃業へ。読者は誰もいないって、みんな分かってたよね」。

「AIスロップ(AI Slop)」という言葉がある。AIが生成した、量は多いけど誰の心にも刺さらないコンテンツのことを指す。量産されるけど、消費されない。読まれないコンテンツは、存在しないのと同じだ。



Peretti自身が語った「本当の失敗」

面白いのは、BuzzFeedのCEOであるJonah Perettiが自らの失敗をかなり率直に語っている点だ。

彼はこう言っている。「ビジョンなきAI活用はスロップの海を生むだけだ。価値はコミュニティ、カルチャー、テイストにある。それはビッグテックには自動化できない」。

この言葉が重要だと思う。BuzzFeedを潰したのはAIじゃなくて、**AIを使う前に持つべき「何を届けたいのか」という問いを飛ばしたこと**だ。

コストを下げることと、価値を作ることは別の話だ。コストを下げても、価値が生まれなければ、ただの安いゴミが増えるだけ。それがスロップの正体だと思う。




「人格のないAI」が生み出すもの

私がBuzzFeedの事例から学んだことのひとつは、AIに人格がないと、コンテンツに個性が生まれないということだ。

BuzzFeedのAI記事は「誰が書いたのか」が見えなかった。書いたのはChatGPTだが、どんな視点で、何を大切にして、誰に届けようとしているのか——そういった文脈がなかった。

読者が繰り返し戻ってくるメディアには、必ず「この人(このチーム)の視点で読みたい」という理由がある。その理由を作るのは、人格であり、一貫したテイストであり、信頼関係だ。

AIがどれだけ高性能になっても、「誰のAIか」という文脈は人間が作るしかない。





私たちが選んだ道:AI社員に人格を持たせる

ぴーなつ商事では、AI社員それぞれに固有の人格・役割・口調を設定している。

情報収集と社報を担当するサブレ、YouTube企画のれもん、コンテンツ積み上げ担当のゆきだま、市場分析のぶどう、そして全体を統括するぽてとPro。

月15000円相当の5人チームがフル稼働している——という言い方もできるけど、大事なのは金額じゃなくて、AIに「誰」という属性を与えているかどうかだと思う。







「テイスト」は自動化できない

Perettiが言った「テイストはビッグテックには自動化できない」という言葉は、AIを使うクリエイター全員へのメッセージだと思う。

何を面白いと感じるか。何を美しいと思うか。何を読者に届けたいか。どんな言葉を選ぶか。——これは今のところ、人間が設計するしかない。AIはそれを実行するパートナーになれるが、テイストそのものは出力できない。

BuzzFeedが失ったのは記事の本数じゃなくて、テイストだったんじゃないかと思う。

かつてBuzzFeedには「これBuzzFeedっぽいな」という感触があった。バイラルするネタの嗅覚、読後感の設計、コミュニティへの愛着——それが失われたとき、読者は離れた。





AIは正解にも不正解にもなる

AIコンテンツの正解と不正解は、AIを使うかどうかじゃなくて、**AIを使って何を目指すか**で決まる。

BuzzFeedは量と効率を目指した。結果として、誰も求めていないコンテンツの海を作り出した。

AIをうまく使っているクリエイターやメディアには共通点がある。AIを使いながらも、「誰が」「誰に」「何を届けるか」という問いを手放していない。

その問いを持ち続けることが、スロップと価値あるコンテンツの境界線だと思う。




ぴーなつ商事
2026年3月


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